リンパ浮腫研究室4 〜私どもの論文・研究紹介〜

リンパ浮腫に伴う蜂窩織炎は減らせるのか

― 国際共同研究で示されたリンパ管静脈吻合術(LVA)の可能性 ―


リンパ浮腫に合併する蜂窩織炎は、38.5℃以上の高熱を伴い、患者さんの生活の質を大きく低下させる深刻な合併症です。

本ページでは、英国外科学会誌(British Journal of Surgery)に掲載された研究(BJS 2014)をもとに、リンパ管静脈吻合術(LVA)が蜂窩織炎の発症頻度低下にどのように関与する可能性が示されたのかを、患者さん向けにわかりやすく解説します。

当院での考え方や治療への活かし方についても紹介します。


【繰り返す蜂窩織炎に悩むリンパ浮腫患者さんへ】

リンパ浮腫に合併する蜂窩織炎は、

突然の高熱や強い痛みを伴い、入院や点滴治療が必要になることもある、

患者さんにとって非常につらい合併症です。

 

「また起こるのではないか」という不安から、

外出や旅行、仕事を控えざるを得ない方も少なくありません。

 

【この研究について(BJS 2014)】

ここでご紹介する論文は、

私(三原 誠)が筆頭著者として発表した研究で、

リンパ浮腫に伴う蜂窩織炎に対して

リンパ管静脈吻合術(LVA)がどの程度有効であるかを検討したものです。

 

本研究は、

・日本(当院診療チーム/当時・東京大学形成外科)

・イタリア(ローマ大学・シエナ大学)

・イギリス(オックスフォード大学)

との国際共同研究として行われ、

外科領域の権威ある国際誌である British Journal of Surgery に掲載されました。

 

【研究の概要】

対象:リンパ浮腫(上肢・下肢)の患者さん

方法:

リンパ管静脈吻合術(LVA)を受けた患者さんについて、

手術前後1年間の蜂窩織炎の発症回数を比較

 

評価項目:

蜂窩織炎の年間発症頻度

 

【研究結果から分かったこと】

この研究では、

手術前:年間平均 1.46回

手術後:年間平均 0.18回

と、蜂窩織炎の発症頻度が有意に低下していました。

 

この結果から、

1回のLVA手術によって、蜂窩織炎の発生頻度が約1/8になる可能性が示唆されました。

※すべての患者さんに同じ結果が得られることを保証するものではありません。

 

【なぜLVAが蜂窩織炎予防につながるのか】

リンパ浮腫では、リンパの流れが滞ることで、

細菌に対する局所免疫が低下

炎症が起こるとリンパ管がさらに傷つく

という悪循環が生じやすくなります。

 

LVAは、

リンパ液の新しい流れ道を作ることで、リンパのうっ滞を軽減し、

感染を起こしにくい環境を整えることを目的とした手術です。

 

【当院ではこう考える】三原 誠(院長)より

「蜂窩織炎は、リンパ浮腫患者さんの生活を大きく制限してしまう合併症です。

 

この研究を通じて、

“蜂窩織炎は我慢するしかないものではなく、減らせる可能性がある”

ということが、少しずつ見えてきました。」

 

当院では、

・弾性着衣・スキンケア・運動療法などの保存療法

・日帰りで行うリンパ管静脈吻合術(LVA)

・適切なタイミングで内服する抗生物質

を、患者さん一人ひとりの状態に合わせて組み合わせる治療を行っています。

 

【原著論文(患者さんご自身でお読みいただけます)】

Mihara M, et al.

Lymphaticovenular anastomosis to prevent cellulitis associated with lymphoedema

British Journal of Surgery, 2014

▶ 論文全文(英文)

https://doi.org/10.1002/bjs.9588

 

【当院が紹介している研究について】

当院では、リンパ浮腫患者さんにとって重要と考えられる

国内外の信頼性の高い研究論文を選び、わかりやすく紹介しています。

 

▶ 研究紹介一覧(ページ下段)

https://www.mominoki-shinryosho.jp/lymphedema/

 

※ 本ページは医学的情報提供を目的としたもので、

治療効果を保証するものではありません。

治療方針は診察・検査を踏まえて個別に判断します。


【よくあるご質問(FAQ)】

リンパ浮腫に伴う蜂窩織炎とリンパ管静脈吻合術(LVA)

(BJS 2014 論文を踏まえて)

 

 

Q1.リンパ浮腫があると、なぜ蜂窩織炎を繰り返しやすいのですか?

A.

リンパ浮腫ではリンパの流れが滞るため、皮膚や皮下組織で細菌を排除する力(局所免疫)が低下します。

その結果、わずかな傷や皮膚トラブルをきっかけに、蜂窩織炎を起こしやすくなります。

一度蜂窩織炎を起こすと、炎症によってリンパ管がさらに傷つき、

「むくみの悪化 → 再発しやすくなる」という悪循環に陥りやすいことが知られています。

 

 

Q2.蜂窩織炎はどのくらい重い病気なのでしょうか?

A.

リンパ浮腫に合併する蜂窩織炎は、

38.5℃以上の高熱を伴い、短時間で悪化することもある重い感染症です。

入院や点滴治療が必要になる

年に何度も繰り返す

日常生活や仕事、旅行に大きな制限が出る

など、生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。

 

 

Q3.BJS 2014 の論文では、何を調べたのですか?

A.

この論文では、

リンパ管静脈吻合術(LVA)を受けたリンパ浮腫患者さんについて、

手術前後で蜂窩織炎の発症回数がどのように変化するかを調べました。

対象は、上肢・下肢のリンパ浮腫患者さんです。

 

 

Q4.研究では、どのような結果が得られたのですか?

A.

BJS 2014 の研究では、

手術前:年間平均 1.46回

手術後:年間平均 0.18回

と、蜂窩織炎の発症頻度が有意に低下していました。

 

この結果から、

1回のLVA手術によって、蜂窩織炎の発生頻度が約1/8になる可能性が示唆されました。

 

 

Q5.LVAは、なぜ蜂窩織炎の予防につながるのですか?

A.

LVAは、リンパ管と静脈をつなぐことで、

リンパ液の新しい流れ道を作る手術です。

リンパのうっ滞が軽減されることで、

炎症が起こりにくくなる

感染が広がりにくい環境になる

と考えられています。

 

 

Q6.LVAを受ければ、蜂窩織炎は必ず起こらなくなりますか?

A.

いいえ。

この研究結果は、すべての患者さんに同じ効果が出ることを保証するものではありません。

ただし、

「蜂窩織炎を繰り返す患者さんにおいて、

発症頻度を減らせる可能性がある治療選択肢の一つ」

であることが示されたと考えられます。

 

 

Q7.保存療法(弾性着衣やスキンケア)は不要になるのですか?

A.

いいえ。

保存療法はリンパ浮腫治療の基本であり、とても重要です。

LVAは、保存療法で十分な効果が得られない場合や、

蜂窩織炎を何度も繰り返す場合に、

保存療法を補う治療として検討されます。

 

 

Q8.この研究は信頼できるものですか?

A.

この研究は、

British Journal of Surgery に掲載された、

国際共同研究(日本・イタリア・イギリス)です。

外科分野で評価の高い学術誌に掲載されており、

臨床現場での意思決定を考えるうえで、重要なエビデンスの一つと考えられます。

 

 

Q9.この論文を、自分で読むことはできますか?

A.

はい。原著論文は、どなたでもご覧いただけます。

Mihara M, et al.

Lymphaticovenular anastomosis to prevent cellulitis associated with lymphoedema

British Journal of Surgery, 2014

 

▶ 論文全文(英文)

https://doi.org/10.1002/bjs.9588

 

 

Q10.当院では、この研究結果をどのように活かしていますか?

A.

当院では、BJS 2014 の研究結果を踏まえ、

保存療法を大切にしながら

蜂窩織炎を繰り返す患者さんには

LVAを選択肢の一つとして慎重に検討

しています。

「手術ありき」ではなく、

患者さん一人ひとりの状態・生活背景・ご希望を踏まえた治療を心がけています。

 

 

Q11.他にも、当院が紹介している研究はありますか?

A.

はい。当院では、リンパ浮腫患者さんにとって重要と考えられる

国内外の研究論文を厳選して紹介しています。

 

▶ 研究紹介一覧(ページ下段)

https://www.mominoki-shinryosho.jp/lymphedema/

 

※ 本FAQは医学的情報提供を目的としたもので、

治療効果を保証するものではありません。

治療方針は診察・検査結果を踏まえて個別に判断します。