公開日:2026年7月17日
執筆・監修:三原 誠(形成外科専門医・むくみクリニック院長)
婦人科医・医療者向け「センチネルリンパ節生検後のリンパ浮腫」のページはこちら。
下腹部・鼠径部・陰部の違和感と受診の目安のページはこちら。
センチネルリンパ節生検は、従来の広い範囲のリンパ節郭清と比べて、リンパ浮腫の発症リスクを大幅に下げる優れた方法です。ただし、発症を完全にゼロにするものではありません。**脚の重さや左右差、下腹部・鼠径部・陰部の腫れが続く場合は、慌てる必要はありませんが、重症化する前に婦人科の主治医やリンパ浮腫専門施設へ相談することが大切です。
急に片脚が腫れた場合は、最初からリンパ浮腫と決めつけないでください。
痛み、熱感、赤み、息苦しさ、胸痛、発熱などを伴う場合は、深部静脈血栓症や蜂窩織炎などの可能性があります。婦人科の治療施設または救急医療機関へ速やかにご相談ください。
むくみクリニックの初診予約・受診の流れはこちら
1.センチネルリンパ節生検とは
2.リンパ節郭清との違い
3.センチネルリンパ節生検後でもリンパ浮腫は起こるのか
4.子宮頸がん・子宮体がん・外陰がん別の発症率
5.なぜ発症リスクがゼロにならないのか
6.リンパ浮腫が起こりやすくなる要因
7.発症しやすい時期
8.初期症状チェックリスト
9.下腹部・鼠径部・陰部のリンパ浮腫
10.リンパ浮腫以外に考えられる原因
11.すぐに受診すべき症状
12.専門施設へ相談する目安
13.むくみクリニックで行う評価・検査
14.当院の治療方針
15.LVAを検討する患者さん
16.日本婦人科腫瘍学会での発表と論文
17.婦人科医・医療関係者の先生方へ
18.患者さんの受診方法
19.FAQ
20.参考文献
センチネルリンパ節生検は、がん細胞が最初に流れ着く可能性が高いリンパ節を見つけ、重点的に調べる手術です。多数のリンパ節を一律に切除する方法より、体への負担やリンパ浮腫のリスクを減らすことが期待できます。
「センチネル」には、「見張り役」という意味があります。
がんの近くに、蛍光色素であるICGや放射性同位元素を含む薬剤を注入し、リンパ液の流れをたどります。その先で最初に見つかるリンパ節を摘出し、病理検査でがん細胞の有無を調べます。
ただし、センチネルリンパ節生検には、次の2つの使い方があります。
・センチネルリンパ節を調べた後も、予定どおりリンパ節郭清を行う「マッピング手術」
・センチネルリンパ節が陰性であることなどを確認し、一定の条件下で系統的リンパ節郭清を省略する「ナビゲーション手術」
そのため、「センチネルリンパ節生検を受けた」という情報だけでは、実際にどこまでリンパ節が切除されたか分からない場合があります。手術記録や病理結果を確認することが大切です。
日本婦人科腫瘍学会の2026年版手引きでは、子宮頸がん、子宮体がん、外陰がんについてセンチネルリンパ節生検の適応、トレーサー、病理診断、施設・術者基準が整理されています。
【2026年度の保険適用について】
2026年度診療報酬改定で、子宮悪性腫瘍手術および腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術に、センチネルリンパ節生検加算が新設されました。
画像診断で所属リンパ節転移が認められない子宮悪性腫瘍の手術が対象
所定の施設基準を満たし、届出を行った医療機関で算定
厚生労働省の点数表と、日本婦人科腫瘍学会の手引きで確認できます。外陰がんについては、女子外性器悪性腫瘍手術における別のセンチネルリンパ節生検加算として取り扱われます。
子宮悪性腫瘍に関する主な施設基準は、次のとおりです。
・産婦人科または婦人科の経験が5年以上あり、指導下で術者として5症例以上の経験がある医師の配置
・産婦人科または婦人科と放射線科を標榜し、それぞれに常勤医師を配置
・麻酔科標榜医の配置
・病理部門と病理医の配置
・関係学会の指針の遵守
・施設基準の届出
実際に保険診療の対象となるかは、がんの種類、進行期、画像所見、術式、使用する薬剤、医療機関の届出状況によって異なります。手術を受ける医療機関でご確認ください。
センチネルリンパ節生検は、必要な少数のリンパ節を選んで調べる方法です。骨盤内リンパ節郭清や鼠径大腿リンパ節郭清は、一定の範囲にある多数のリンパ節と周囲組織をまとめて切除します。
センチネルリンパ節生検は、患者さんの負担を減らしながら必要なリンパ節情報を得るための重要な進歩です。
一方で、センチネルリンパ節が陽性だった場合、片側でリンパ節を同定できなかった場合、画像や術中所見で疑わしいリンパ節がある場合などには、追加のリンパ節郭清や別の治療が必要になることがあります。

はい。センチネルリンパ節生検はリンパ浮腫を大幅に減らしますが、発症リスクを完全にゼロにするものではありません。
New England Journal of Medicineという国際的に著名な医学雑誌に報告された子宮頸がんのPHENIX第Ⅲ相ランダム化試験では、センチネルリンパ節陰性の早期子宮頸がん患者838人を対象に、センチネル生検のみの群と骨盤リンパ節郭清を追加した群が比較されました。
中央値62.8か月の観察で、リンパ浮腫は次の割合でした。
・センチネルリンパ節生検のみ:5.2%
・骨盤リンパ節郭清を追加:19.1%
・リンパ嚢胞も8.3%対22.0%で、センチネル生検のみの群で少ない結果でした。[
この結果は、センチネルリンパ節生検の大きな利点を示しています。一方で、センチネル生検のみでも5.2%にリンパ浮腫が記録されており、「発症しない」と言い切ることはできません。
発症率の数字が研究によって違う理由
研究で報告される発症率には、かなり幅があります。
主な理由は、次の違いです。
・子宮頸がん、子宮体がん、外陰がんなど対象疾患
・センチネルリンパ節だけを摘出したか、追加郭清も行ったか
・放射線治療の有無
・術後3か月、1年、5年など観察期間
・医師の診断、周径測定、体積測定、患者さんの質問票など診断方法
・手術前からあったむくみを含むか
・脚だけでなく、鼠径部・陰部の自覚症状まで含めるか
したがって、異なる研究の数字を単純に横並びにはできません。
大切なのは、「センチネル生検は郭清より明らかに低リスクだが、症状が出る患者さんは少数ながら存在する」と理解することです。
【子宮頸がん】
子宮頸がんでは、センチネルリンパ節生検のみとすることで、骨盤リンパ節郭清よりリンパ浮腫が大きく減少します。ただし、脚・鼠径部・陰部の症状が残る患者さんもいます。PHENIX試験では、リンパ浮腫は5.2%(センチネルリンパ節生検)対19.1%(骨盤内リンパ節郭清)でした。
デンマークのSENTIREC前向き研究では、術後3か月の患者報告による早期リンパ浮腫が、センチネルマッピングのみで5.6%、骨盤リンパ節郭清を追加した群で32.3%でした。脚だけでなく、鼠径部や陰部の症状も質問されています。
鹿児島大学からの報告では、センチネルリンパ節ナビゲーション手術70人中、下肢リンパ浮腫は0人でした。ただし、比較的小規模な研究であり、「すべての患者さんでゼロ」という意味ではありません。
【子宮体がん】
子宮体がんでも、センチネルリンパ節生検は広範なリンパ節郭清よりリンパ浮腫を減らします。ただし、患者さんの自覚症状を質問票で調べると、一定数の症状が確認されます。
Mayo Clinicの研究では、術後中央値54.3か月の時点で、質問票を含めて評価したリンパ浮腫の有病率は、センチネルリンパ節群で26.0%、リンパ節郭清群で49.4%でした。センチネル群には、一部、側別の追加郭清を受けた患者さんも含まれています。
別の患者報告研究では、センチネルリンパ節群27%、リンパ節郭清群41%でした。BMIが高いことと、外照射による放射線治療もリンパ浮腫症状と関連していました。
一方、医師が臨床的に診断した研究では、センチネルリンパ節生検後1.3%、骨盤・傍大動脈リンパ節郭清後18.1%でした。[7]
この差は、「患者さんが感じる軽い重さや張り」まで含めるか、「臨床的に明らかなリンパ浮腫だけ」を数えるかによって、発症率が大きく変わることを示しています。
【外陰がん】
外陰がんでは、適切な患者さんにセンチネルリンパ節生検を行うことで、鼠径大腿リンパ節郭清後のリンパ浮腫や創部合併症を大幅に減らせます。
GROINSS-V研究では、長期的な脚のリンパ浮腫は次の割合でした。
・センチネルリンパ節生検のみ:1.9%
・センチネルリンパ節陽性後に鼠径大腿リンパ節郭清:25.2%
蜂窩織炎も4.5%対21.3%、丹毒の反復も0.4%対16.2%で、広範な郭清を受けた群で多い結果でした。
外陰がんのメタ解析でも、鼠径大腿リンパ節郭清後の下肢リンパ浮腫は、センチネル生検後より約5倍多いと報告されています。
外陰がんでは脚だけでなく、鼠径部や外陰部の腫れ、皮膚のリンパ小疱、リンパ液の漏れなどが問題になることがあります。
どのがんでも、センチネルリンパ節生検はリンパ節郭清より低リスクです。ただし、数字は診断方法と観察期間によって変わります。
数字の読み方
「1.3%」と「26%」は矛盾しているわけではありません。前者は臨床的に診断されたリンパ浮腫、後者は患者さんが感じる軽い症状を質問票で拾い上げた結果です。個々の発症率を予測する数字ではありません。
センチネルリンパ節生検でも、リンパ節とそこにつながるリンパ管の一部を切除するため、リンパの流れに一定の変化が生じます。
主な理由は次のとおりです。
1.少数でもリンパ節とリンパ管を切除するため
センチネル生検は切除範囲を小さくできますが、リンパ系にまったく触れない手術ではありません。
2.リンパの流れには個人差があるため
リンパ管の本数、太さ、走行、左右のバランス、代わりの流れをつくる能力には個人差があります。同じ数のリンパ節を摘出しても、影響は同じではありません。
3.追加のリンパ節郭清が行われることがあるため
センチネルリンパ節が陽性だった場合、片側で同定できなかった場合、疑わしいリンパ節が見つかった場合などには、追加郭清が必要になることがあります。
4.放射線治療や術後の瘢痕が影響するため
放射線治療や手術後の線維化は、リンパ管や周囲組織の柔軟性を低下させ、リンパ液の流れに影響することがあります。
5.手術以外の要因が重なるため
体重増加、感染、リンパ嚢胞、創傷治癒の遅れ、静脈疾患、運動量低下、がんによるリンパ流の閉塞などが関係することがあります。NCIも、手術、放射線治療、感染、治癒遅延、肥満、進行がんなどを関連要因として挙げています。
追加のリンパ節郭清、放射線治療、BMI高値などは、婦人科がん術後リンパ浮腫との関連が比較的一貫して報告されています。ただし、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
2025年の系統的レビューでは、リンパ節郭清、摘出リンパ節数、放射線治療、BMI
25kg/m²超が主なリスク因子として抽出されました。ただし、研究間のばらつきは大きく、個人の発症を正確に予測できる段階ではありません。
【静脈疾患について】
下肢静脈瘤、静脈弁不全、過去の深部静脈血栓症などは、むくみの原因や増悪要因になります。
一方、「静脈疾患がセンチネルリンパ節生検後リンパ浮腫の独立した発症因子である」とする証拠は、現時点では十分に一貫していません。リンパ浮腫と静脈性浮腫が併存することもあるため、鑑別が重要です。
リンパ浮腫は手術後数週間から数か月で現れることもあれば、数年後に初めて気づくこともあります。「何年過ぎれば絶対に安心」という期限はありません。
婦人科がん患者を術前から24か月追跡した前向き研究では、新たに発生したリンパ浮腫の約4分の3が治療後12か月までに確認されました。[11]
一方、リンパ節郭清後の研究では、数年後に診断される例も報告されています。NCIも、リンパ浮腫は治療直後だけでなく、治療終了から何年も経過して発症することがあると説明しています。
目安としては、次のように考えます。
・術後早期:手術の炎症、点滴、運動量低下などによる一時的なむくみも多い
・術後数か月~2年:リンパ浮腫が現れやすい時期
・数年後以降:体重増加、感染、放射線の晩期影響、静脈疾患などをきっかけに症状が現れることがある
術後早期のむくみが、すべて慢性リンパ浮腫になるわけではありません。経過を見ながら原因を評価することが大切です。
見た目に腫れていなくても、重さ、張り、左右差などが初期のサインになることがあります。ただし、これらの症状だけでリンパ浮腫と確定することはできません。
次の症状が続く、繰り返す、徐々に強くなる場合は、婦人科の主治医または専門施設へご相談ください
当院と順天堂大学産婦人科による研究では、リンパ流の画像異常、患者さんの違和感や重だるさ、周径増大の順に変化が確認されました。見た目の腫れだけを待つと、早期変化を見逃す可能性があります。
ただし、すべての違和感がリンパ浮腫というわけではなく、症状のないすべての患者さんに画像検査が必要という意味でもありません。
□ 片脚だけ重く感じる
□ 脚が張る、締めつけられる感じがある
□ 太ももやふくらはぎに左右差を感じる
□ 下着、靴下、ズボンの跡が片側だけ強く残る
□ 靴やズボンが片側だけきつい
□ 夕方や長く歩いた後に腫れやすい
□ 一晩休んでもむくみが戻りにくくなった
□ 足の甲や足首が腫れてきた
□ 太ももの内側や鼠径部が張る
□ 下腹部が片側だけ膨らむ、重い
□ 外陰部・陰部が腫れる
□ 皮膚を押すと跡が残る
□ 皮膚が硬い、厚い、つまみにくい
□ 赤み、熱感、痛み、発熱を繰り返す
□ 「以前と何か違う」という感覚が続く

はい。婦人科がん術後のリンパ浮腫は、脚だけでなく、下腹部、鼠径部、大腿内側、外陰部・陰部に現れることがあります。
特に、骨盤や鼠径部の手術に近い場所から、次の症状が現れることがあります。
・下腹部の片側が張る
・鼠径部が盛り上がる、下着が食い込む
・太ももの付け根や内側が重い
・外陰部が腫れる
・陰部にリンパ小疱ができる
・皮膚から透明または淡黄色の液がにじむ
・歩行、排尿、性交などで痛みや違和感がある
婦人科がん治療後には脚、性器、腹部にリンパ浮腫が起こり得ると説明しています。
当院の報告でも、婦人科がん術後の初期症状は、鼠径部、下腹部、大腿内側、陰部など、手術部位に近い領域に現れる傾向が示されています。末梢神経障害、瘢痕拘縮、肥満などとの鑑別が必要です。
婦人科がん手術後のむくみが、すべてリンパ浮腫とは限りません。安全のため、まず緊急性のある病気や、治療方法が異なる病気を除外します。
主な鑑別疾患は次のとおりです。
【血管に関係するもの】
深部静脈血栓症
下肢静脈瘤
慢性静脈不全
過去の血栓症による静脈障害
【感染・炎症】
蜂窩織炎
手術創感染
関節炎
皮膚炎
【がん治療後の変化】
術後の一時的な炎症性浮腫
リンパ嚢胞
術後瘢痕や拘縮
末梢神経障害
放射線治療後の組織変化
【全身性のむくみ】
心臓、腎臓、肝臓、甲状腺の病気
低栄養、低アルブミン血症
薬剤によるむくみ
運動量低下
体重増加
【がんに関係するもの】
骨盤内や鼠径部のがん再発
腫瘍によるリンパ管・静脈の圧迫
両脚が同じようにむくむ場合は、全身性浮腫や薬剤、静脈性浮腫なども考えます。ただし、骨盤内のリンパ流障害では両脚にリンパ浮腫が起こることもあります。
急激な腫れ、強い痛み、赤み、発熱、息苦しさなどがある場合は、リンパ浮腫専門外来の予約を待たず、治療中の病院または救急医療機関へご相談ください。
【深部静脈血栓症を疑う症状】
急に片脚が腫れた
ふくらはぎや太ももが痛い
触ると熱い
赤い、紫色に変色している
圧痛がある
深部静脈血栓症は、症状が軽い場合や、症状がない場合もあります。疑わしいときは早期の医療評価が必要です。
【肺塞栓症を疑う症状】
突然の息苦しさ
胸痛
深呼吸や咳で悪化する胸の痛み
血の混じった痰
動悸
失神、強いふらつき
これらがある場合は、救急車を要請するなど、直ちに救急医療を受けてください。
【蜂窩織炎を疑う症状】
脚や陰部が赤い
熱を持っている
痛い、触れると強く痛む
急速に腫れが広がる
発熱、悪寒、だるさがある
蜂窩織炎は抗菌薬治療が必要なことがあり、放置すると重症化する場合があります。発熱や皮膚の赤み・熱感がある場合は、当日中を目安に医療機関へ連絡してください。
【がん再発などを確認すべき症状】
不正性器出血
血液を含む、または普段と異なる帯下
新しく出現した骨盤痛、腹痛、腰痛
排尿しにくい、血尿
便通の変化
急速に悪化する片脚の腫れ
原因不明の体重減少や強い疲労
これらは良性疾患でも起こりますが、がん治療後には主治医による確認が大切です。
【急な腫れの際の注意】
深部静脈血栓症や感染が否定されるまでは、自己判断で強く揉む、強い圧迫を始める、長時間運動することは避けてください。

見た目に明らかな腫れが出るまで待つ必要はありません。症状が続く、繰り返す、左右差がある場合は、専門的な評価を受けてよいタイミングです。
相談を検討していただきたい症状は次のとおりです。
脚の重さ、張り、違和感が続く
左右差が徐々に目立つ
太ももや鼠径部だけが腫れる
下腹部や陰部が腫れる
蜂窩織炎を起こした、または繰り返す
弾性ストッキングが合わない
圧迫療法を行っても改善しにくい
リンパ浮腫か静脈性浮腫か分からない
婦人科の主治医から専門評価を勧められた
LVAの適応があるか知りたい
一時的な軽いむくみで、休息後に改善し、その後繰り返さない場合は、すぐに専門検査が必要とは限りません。
「センチネルだったのに、どうしてむくむのだろう」と戸惑うのは自然なことです。症状を相談することは、手術や治療の選択が間違っていたという意味ではありません。
当院では、最初からリンパ浮腫と決めつけず、手術内容、放射線治療、症状、身体所見、画像検査を組み合わせて評価します。
【1.問診・治療歴の確認】
次の情報を確認します。
がんの種類、進行期
手術日と手術方法
センチネルリンパ節の摘出個数と部位
追加リンパ節郭清の有無
病理結果
放射線治療、薬物療法
リンパ嚢胞や創部感染の既往
蜂窩織炎の回数
症状が始まった時期
体重変化
静脈疾患や血栓症の既往
現在行っている圧迫療法
【2.身体診察】
両脚の左右差
周径
足背、足首、下腿、大腿の状態
下腹部、鼠径部、陰部の腫れ
圧痕の有無
皮膚・皮下組織の硬さ
皮膚炎、傷、リンパ小疱
静脈瘤や静脈性浮腫を疑う所見
【3.リンパ管エコー】
リンパ管エコーは、超音波を用いて皮下の集合リンパ管を描出する検査です。
リンパ管の位置や太さ、変性の程度などを評価します。放射線被ばくがなく、繰り返し行えることが利点です。
一方、リンパ管エコーだけでリンパ浮腫の有無や全身のリンパ流をすべて判断できるわけではありません。臨床所見や他の画像検査と組み合わせます。
※リンパシンチグラフィでの確定診断後、必要に応じて医師の判断で実施します。
【4.リンパシンチグラフィ】
リンパシンチグラフィは、脚から骨盤方向へのリンパ液の流れを画像で確認する検査です。確定診断します。
リンパ管の途絶、流れの遅延、皮膚側への逆流などを評価します。検査の必要性は、症状、身体所見、既に受けている検査などから判断します。
【5.その他の検査・他院への紹介】
深部静脈血栓症、静脈不全、心臓・腎臓疾患、感染、がん再発などが疑われる場合は、それぞれに適した医療機関での検査を優先します。
ICGリンパ管蛍光造影については、**【要確認:当院での実施範囲・連携先・掲載表現】**とします。
リンパ浮腫治療の基本は保存療法(医療用弾性ストッキング・スリーブ、体重コントロール、運動習慣定着等)です。当院では圧迫療法を重視し、必要な患者さんに限ってLVAを組み合わせます。
むくみクリニックは、東京・代々木にあるリンパ浮腫治療専門クリニックです。
手術を先に勧めるのではなく、患者さんの病期、症状、生活、皮膚の状態、リンパ管の状態を踏まえて、治療方法を選びます。
【保存療法】
保存療法には、次のような方法があります。
圧迫療法
運動
体重管理
スキンケア
日常生活上の工夫
必要に応じた複合的治療
国際リンパ学会のコンセンサスでも、患者さんごとの状態に合わせた保存的管理がリンパ浮腫治療の中心に位置づけられています。
【圧迫療法】
圧迫療法は、リンパ浮腫管理の中心となる治療です。
弾性ストッキングや包帯を用いて、皮下にたまった水分を減らし、再びたまりにくくします。
ただし、圧迫は強ければよいわけではありません。
症状のある部位
体形
皮膚の弱さ
着脱能力
仕事や生活
動脈・静脈の状態
などを考えて選びます。
急な片脚腫脹、感染、動脈循環障害などが疑われる場合は、自己判断で強い圧迫を開始しないでください。
【運動・体重管理・スキンケア】
適度な歩行や筋力運動は、ふくらはぎなどの筋ポンプ作用を通じて、リンパ液や静脈血の還流を助けます。
体重が多い場合も、極端な食事制限ではなく、継続できる範囲で体重を整えることが大切です。
皮膚を清潔に保ち、乾燥や小さな傷、爪周囲炎、水虫などを予防することは、蜂窩織炎の予防につながります。
【リンパ管エコーによる評価】
リンパ管エコーを、診断の補助、病態評価、LVAの手術計画などに使用します。
【リンパシンチグラフィ】
必要な患者さんには、リンパ流の全体像を確認し、リンパ浮腫の有無や程度を評価します。
【必要に応じた日帰りLVA】
LVAは、機能が残る細いリンパ管と静脈を顕微鏡下でつなぎ、リンパ液を静脈へ流す手術です。
当院では、適応がある患者さんに日帰りで実施しています。
ただし、LVAはすべての患者さんに必要な治療ではありません。また、LVAを受ければ必ずむくみがなくなる、圧迫療法が不要になる、という手術ではありません。
【長期フォローアップ】
リンパ浮腫は、手術だけで診療が終わる病気ではありません。
当院では、圧迫方法の調整、体重や活動量、皮膚の状態、蜂窩織炎、リンパ管の変化などを長期的に確認することを大切にしています。
LVAは、リンパ浮腫の診断が確認され、保存療法だけでは十分に管理しにくい場合や、蜂窩織炎を繰り返す場合などに検討します。
主な判断材料は次のとおりです。
リンパ浮腫であることが確認されている
機能が残るリンパ管を確認できる
適切な保存療法を行っても症状が続く
腫れ、重さ、張りが生活に影響している
蜂窩織炎を繰り返している
下腹部・鼠径部・陰部の症状がある
圧迫療法の負担が大きい
患者さんが手術の利点と限界を理解している
当院を含む多施設ランダム化比較試験では、少なくとも3か月の保存療法を受けた二次性下肢リンパ浮腫患者において、LVAと保存療法の併用は、保存療法単独より6か月間の蜂窩織炎回数を減らしました。一方、周径や痛みには統計学的に明らかな群間差が認められませんでした。[17]
この結果からも、LVAは「全員のむくみを必ず小さくする手術」ではなく、特に感染予防などを含め、患者さんごとに目的を明確にして検討する治療です。
【内部リンク】
センチネルリンパ節生検の利点を尊重しながら、少数ながら症状が出た患者さんを、早期に適切な診療へつなげることを大切にしています。
「センチネルだったので、リンパ浮腫にはならないと思っていました」
「むくみは起こらないと聞いていたので、相談してよいのか迷いました」
このような戸惑いを感じる患者さんは、珍しくありません。
センチネルリンパ節生検は、リンパ浮腫を減らすためにも非常に意義のある方法です。術後にむくみが出たからといって、手術の選択が間違っていたということではありません。
当院では次の点を重視します。
不安をあおらない
リンパ浮腫以外の原因も考える
がんの治療と経過観察を最優先する
保存療法を基本とする
手術の必要性を慎重に判断する
婦人科の主治医と情報を共有する
下肢だけでなく、下腹部・鼠径部・陰部も評価する
長期的に無理なく続けられる治療を考える
センチネルリンパ節生検後であっても、下肢・下腹部・鼠径部・陰部に症状が出る患者さんがいます。明らかな周径増大を待たず、症状が持続する場合は専門評価をご検討ください。
次のような患者さんは、ご紹介を検討いただけますと幸いです。
下肢の左右差がある
重だるさ、張り、違和感が続く
下腹部、鼠径部、陰部の浮腫がある
蜂窩織炎を発症した、または繰り返す
圧迫療法の選定に難渋している
リンパ浮腫かどうか判断が難しい
リンパシンチグラフィやリンパ管エコーの評価が必要
LVAの適応評価を希望している
簡単な内容の紹介状でも受け入れ可能です。
当院では、診察・検査・治療方針について、紹介元の先生へ丁寧に返書する方針です。
ただし、次の状態が疑われる場合は、まず、がん治療を行った施設または救急医療機関での評価をお願いいたします。
がん再発
深部静脈血栓症
肺塞栓症
蜂窩織炎などの急性感染症
急速に進行する原因不明の浮腫
受診時には、手術内容や放射線治療の情報があると、より正確な評価につながります。
【お持ちいただきたいもの】
婦人科からの紹介状
手術記録または退院時サマリー
病理結果
放射線治療の記録
CT・MRIなどの画像や報告書
現在使用している弾性ストッキング
お薬手帳
蜂窩織炎を起こした時期や治療内容のメモや写真
むくみの変化が分かる写真
【紹介状について】
簡単な紹介状でも受け入れ可能です。
紹介状なしでの初診可否:可
紹介状がない場合も、手術・病理・放射線治療の資料があると役立ちます。
予約方法はこちら
【遠方から受診される方へ】
遠方の患者さんもご相談いただけます。ただし、急な片脚腫脹、発熱、息苦しさなどがある場合は、移動せず、まず現在地の医療機関を受診してください。
本ページは、センチネルリンパ節生検後のリンパ浮腫に関する一般的な医療情報を提供するものです。個々の患者さんの診断や治療方針は、原疾患、手術内容、放射線治療、症状、身体所見、画像検査などによって異なります。
本ページのみで自己診断したり、自己判断で圧迫療法やマッサージ、運動を開始・中止したりせず、婦人科の主治医または適切な医療機関へご相談ください。
急な片脚腫脹、胸痛、息苦しさ、発熱、皮膚の赤み・熱感などがある場合は、リンパ浮腫専門外来の予約を待たず、救急医療機関またはがん治療施設を受診してください。
Q1.センチネルリンパ節生検後でもリンパ浮腫になりますか?
はい。発症リスクは大幅に下がりますが、完全にゼロにはなりません。
子宮頸がんのランダム化試験では、センチネル生検のみで5.2%、骨盤リンパ節郭清群で19.1%にリンパ浮腫が報告されました。ただし、発症率はがんの種類、追加郭清、放射線治療、診断基準、観察期間によって異なります。
Q2.リンパ節郭清をしていなければ安心ですか?
系統的リンパ節郭清を受けていなくても、少数ながらリンパ浮腫が起こることがあります。
センチネルリンパ節とそこにつながるリンパ管の一部は切除されます。また、「センチネル生検」と説明されていても、片側郭清や追加郭清が行われている場合があります。手術記録や病理結果を確認すると、実際の切除範囲が分かります。
Q3.手術から何年後までリンパ浮腫が起こりますか?
治療から数年後に発症することもあり、「何年過ぎれば絶対に起こらない」という期限はありません。
多くは術後数か月から2年以内に現れますが、体重増加、感染、放射線治療の晩期変化などをきっかけに、数年後に症状が出る場合があります。
Q4.片脚が重いだけでも受診してよいですか?
はい。重さが続く、繰り返す、左右差がある場合は相談して構いません。
初期には、明らかな腫れより先に、重さ、張り、違和感が現れることがあります。ただし、筋肉疲労、神経障害、静脈疾患などでも似た症状が出るため、診察で判断します。
Q5.見た目に腫れていなくてもリンパ浮腫のことがありますか?
ありますが、症状だけでリンパ浮腫と確定することはできません。
リンパ流の画像異常が、自覚症状や周径増大より先に現れる場合があります。一方で、見た目に腫れていないすべての方に画像検査が必要という意味ではありません。症状とリスクを踏まえて判断します。
Q6.両脚がむくむ場合もリンパ浮腫ですか?
両脚のリンパ浮腫もありますが、全身性のむくみや静脈性浮腫も考える必要があります。
心臓、腎臓、肝臓、甲状腺、薬剤、運動不足などでも両脚がむくみます。骨盤内のリンパ流障害が両側に及べば、両脚のリンパ浮腫が起こることもあります。
Q7.下腹部や陰部の腫れもリンパ浮腫ですか?
はい。下腹部、鼠径部、外陰部・陰部にもリンパ浮腫が起こることがあります。
婦人科がん術後では、手術部位に近い下腹部、鼠径部、大腿内側、陰部から症状が現れる場合があります。排尿や歩行に影響する腫れ、リンパ小疱、液漏れがある場合はご相談ください。
Q8.放射線治療を受けるとリスクは上がりますか?
放射線治療は、リンパ浮腫リスクと関連することが複数の研究で報告されています。
放射線によってリンパ管や周囲組織に線維化が生じ、リンパ流に影響する可能性があります。ただし、照射部位や線量、リンパ節切除範囲などによってリスクは異なります。
Q9.太っているとリンパ浮腫になりやすいですか?
BMI高値や肥満は、リンパ浮腫の発症・増悪に関連することがあります。
脂肪組織の増加、慢性炎症、活動量低下などが関係すると考えられます。ただし、体重だけで発症が決まるわけではなく、急激な減量は必要ありません。無理なく続けられる体重管理を考えます。
Q10.急に脚が腫れた場合はどうすればよいですか?
急な片脚の腫れは、深部静脈血栓症を除外するため、速やかに医療機関を受診してください。
痛み、熱感、赤みがある場合は特に注意が必要です。息苦しさ、胸痛、血痰、失神がある場合は肺塞栓症の可能性があり、直ちに救急医療を受けてください。
Q11.蜂窩織炎とはどのような症状ですか?
蜂窩織炎は、皮膚や皮下組織に起こる細菌感染症です。
赤み、熱感、腫れ、痛み、発熱、悪寒などが現れます。リンパ浮腫がある部位では発症しやすく、急速に広がることがあります。発熱や強い赤みがある場合は、当日中を目安に医療機関へ連絡してください。
Q12.リンパ浮腫は自然に治りますか?
術後早期の一時的なむくみは改善することがありますが、慢性リンパ浮腫は長期管理が必要になることがあります。
手術直後のむくみには、炎症、点滴、運動不足なども関係します。症状が続く場合は、リンパ浮腫かどうかを評価し、必要な治療を早めに始めます。
Q13.圧迫療法は必ず必要ですか?
すべての患者さんに同じ圧迫療法が必要なわけではありません。
症状、病期、皮膚、動脈・静脈の状態、生活に応じて判断します。軽い症状では経過観察や生活指導が中心になる場合もあります。弾性ストッキングは、適切なサイズと圧迫圧を選ぶことが重要です。
Q14.センチネル生検後でもLVAを受けられますか?
リンパ浮腫が確認され、適応があれば、センチネル生検後でもLVAを検討できます。
リンパ管エコーなどで機能が残るリンパ管を確認し、症状、保存療法の効果、蜂窩織炎の有無を踏まえて判断します。センチネル生検後であること自体は、LVAを受けられない理由にはなりません。
Q15.LVAを受ければ圧迫療法は不要になりますか?
LVA後も圧迫療法が必要な患者さんは多く、手術だけで必ず不要になるわけではありません。
症状が改善して圧迫圧や着用時間を減らせる場合はありますが、結果には個人差があります。手術前に、何を治療目標にするかを相談することが大切です。
Q16.婦人科の主治医から紹介状が必要ですか?
簡単な紹介状があると、手術内容やがん治療の経過を正確に把握しやすくなります。
紹介状がない場合の受診可否は、**【要確認:現行運用】**です。紹介状がなくても、退院時サマリー、手術記録、病理結果、放射線治療の記録などがあればお持ちください。
Q17.手術記録や病理結果は持参した方がよいですか?
はい。特にセンチネルリンパ節の個数、部位、追加郭清の有無が分かる資料は役立ちます。
「センチネル生検」と聞いていても、一部に追加郭清が行われている場合があります。放射線治療記録、CT・MRIの報告書も、可能な範囲でご持参ください。
Q18.遠方からでも受診できますか?
遠方の患者さんも受診できますが、必要な検査や通院回数は患者さんごとに異なります。
事前検査についてはこちら。
センチネルリンパ節生検は、系統的リンパ節郭清と比較してリンパ浮腫の発症を大幅に低減します。一方で、SLNBのみの患者さんにも、下肢、下腹部、鼠径部、陰部の症状が生じることがあります。
明らかな周径増大やpitting edemaがなくても、重だるさ、張り、左右差が持続する場合は、リンパ浮腫専門施設での評価をご検討ください。
【ご紹介を検討いただきたい患者さん】
下肢の左右差
持続する重だるさ、張り
下腹部、鼠径部、陰部の浮腫
蜂窩織炎
リンパ小疱、リンパ漏
圧迫療法の選定・継続に難渋
リンパ浮腫か判断が難しい
静脈性浮腫との鑑別が必要
リンパ管エコーやリンパシンチグラフィによる評価が必要
LVA適応の評価が必要
簡単な診療情報提供書でも受け入れ可能です。当院での評価・治療方針については、紹介元の先生へ丁寧に返書いたします。
がん再発、深部静脈血栓症、肺塞栓症、急性感染症が疑われる場合は、まず治療施設または救急医療機関での評価をお願いいたします。
【紹介状に記載いただきたい情報/わかる範囲で記載】
原疾患、組織型、進行期
手術日・術式
センチネルリンパ節の個数・部位・病理結果
追加郭清の有無・範囲
放射線治療
リンパ嚢胞、創部感染
再発評価
深部静脈血栓症の評価
症状の部位・発症時期
蜂窩織炎歴
現在の圧迫療法
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